午前中にブルとゆっくり過ごし、午後からブルと一緒にいつもの家事。
その前にちょっとだけお外に出よう。
洗濯機にスイッチを入れると眠っているブルを抱いて少しだけ外に出ました。
ブルは花壇の近くをウロウロしながら風と草のにおいを嗅ぐのが大好きでした。
足腰が弱ってからはリードなしで好きに歩かせてやった場所。
ねえ、ブル。
夕方になったらみんなでいつものお散歩コースに行ってみようね。
私の腕の中で眠っているブルの表情が嬉しさと楽しみでぱ〜っと明るくなったように見えました。
さあ。
その前に掃除をしてしまいましょう。
ブルが元気だった頃は、掃除機をかけるとよく吼えて威嚇しながら掃除機の先端にじゃれてきました。
ふざけて掃除機で追いかけると逃げ回り、引っ込めるとまた威嚇をしてじゃれてきました。
仕上げにモップをかけるときは完全にモップに噛み付いて「伏せ」の体制。
前足をぐんと伸ばし後ろ足は肉球を見せた形でずるずると引きずられながら遊ぶのが大好きでした。
ロングヘアだったのでまさにモップ犬。
掃除をするのも楽しいひとときでした。
そんなことを思いながら、掃除する部屋にブルを寝かせ一緒に掃除をしました。
ねえ、ブル。
ここ、ブルが小さかった頃にかじって傷をつけたのよ。
覚えてる?
作りつけのクローゼットにブルがかじって遊んだ傷。
ブルがここにいた印がずっと残るね。
傷をつけられてしまった時は叱ったのだけど、今となっては楽しい思い出。
かじった印を残してくれてありがとう。
子供の身長を柱に傷をつけてわが子の成長を見守るのと同じ印になりました。
窓から入ってくるそよ風に穏やかな表情で寝ているブルのロングヘアがかすかになびいて、気持ち良さそうに風のにおいをクンクン嗅いでいるように見えました。
次に階段の踊り場の掃除。
階段を上がることはできても降りることができなかったブルは、よくこの場所に伏せの体制で階下を眺めていました。
二階でひとりぼっちにするとここでそれはそれは物悲しそうに鳴いて「ひとりぼっちにしないで。早くここから降ろしてよ」と私を呼んだものです。
その場所へブルを寝かせると私もからだをかがめ、ブルと同じ目線で階下を眺めました。
ブルの目線で見るとこの階段、降りるのは怖いねぇ。
眠っているブルが「そうでしょ♪怖かったんだから。」と言っているようでした。
それから階下へ降りて玄関の掃除。
ここはブルにとって最高の遊び場でした。
出しっぱなしにしてある靴を咥え、振り回しながら家の中に並べ、今度は並べた靴を玄関に振り回しながら持っていって遊んだ場所です。
買ったばかりのハイヒールを仕舞うのを忘れたら、かかとに沢山の歯型をつけられ、これも叱るに叱れず大笑いしました。
ブルのために玄関ドアにつけた小さな小さな小窓。
10センチほどの小窓からブルは毎日外の様子を見ていました。
そこにはまだブルの鼻息の跡と舐めた跡が残っていました。
ねえ。ブル。
よくここから覗いていたよね。
人が通るとワンワン吼えてイッチョ前に番犬してたんだよね。
眠っているブルと並んで小窓から外を覗きブルを見ると
「ね。ここから見ると面白いでしょ。」
ブルがそう言っているようでした。
ブルとそんな会話をしていると乾燥機が止まった合図のブザーが鳴りました。
眠っているブルと並んでタオルを畳む作業。
ブルは洗濯物を畳んでいるとよくお邪魔虫をしにやってきました。
畳んだそばから咥えて振り回して遊んだり、洗濯物の山にジャンプして乗ったり、畳み終えた洗濯物の山を倒して遊んだり。
洗濯物を畳む作業をしているときはブルのおかげで笑いがいつもありました。
ほら。
ブルの毛がついてるよ。
洗濯物にもブルはいつもまとわりついていたんだよね。
毎日取るの大変だったんだから。
タオルについたブルの毛を取りながら話しかけると、眠っているブルの表情がはにかんでいるように見えました。
夕方の少し暗くなった時間。
初めて家族揃ってブルのお散歩コースへ行きました。
ヴィヴィが得意になって先頭を歩き、時々後ろを振り返りました。
眠っているブルを抱っこしている私はブルに毎日歩いた景色や風のにおいをたっぷり楽しませてあげたくて、できるだけゆっくり歩きました。
ブルがヴィヴィとお散歩するのは初めてのことです。
元気にお散歩していた頃のブルはいつも信号のところで必ず自分から「おすわり」をし「待て」の体制をしました。
信号が青になって「よし。GO!」と言うとお尻を振りながらモンローウォークで横断歩道を渡る姿はとてもエレガントで、すれ違う人がよく振り返って見ていたものです。
「わあ。可愛い!」と声を掛けられるとニコニコしてシッポを振り、何度も「可愛いね」と言ってくれた人を振り返りながら歩きました。
オシッコもうんちもいつも決まった場所。
そのあたりまで来ると少し立ち止まってやりました。
ねえ、ブル。
いつもこの辺でオシッコだったね。
眠っているブルに話しかけると、ブルはお散歩を楽しんでいるように見えました。
いつものようにお散歩コースをUターン。
家に向かう最後の信号を渡るとき、ブルはいつも横断歩道を渡りたがらず別の方向へ私を引っ張り「もっとお散歩しようよ」と誘いました。
でも今日は真っ直ぐ帰宅。
家に入りいつものように新しいお水をくんで目の前に差し出し、唇にうっすらとくんだお水をつけてやると、眠っているブルの表情はとても満足そうに見えました。
お散歩に連れて行ってよかった。
目が見えなくなってからはお散歩を怖がってリードをつけても歩きたがりませんでした。
だから家の前でしか外の空気を味わえなかったんだもんね。
晩ごはんの支度をし、ブルとヴィヴィのごはんの用意。
今夜もブルはいつもの指定席で寝かせてやる予定です。
それまでの間は私のすぐそばに。
今、横を振り向くとそこにはブルが穏やかな表情で眠っています。
動き回ることはもうないけれど、ブルは確かに私の中で生きています。
私より早く長い眠りについただけ。
いずれ私もブルのところへ行くのです。
だからまた一緒にお散歩ができるよう、ブルのお気に入りのリードを切り離し、片方はブルに持ち手のところは私に。
いつでもブルとお散歩できるようにしました。

まだ涙は溢れて止まりませんが、今日はブルと一緒にいつもの日を送ったことで少しずつ気持ちが落ち着いてきました。
ブルは長い眠りについただけ。
そうだよね?ブル。。